公開記事

クリエイターや起業家を育て、 たくさんの挑戦や事業が生まれる。
そんな仕組みを持った村。

粘り強く耐えた人にしか、運もタイミングも微笑まない。

カナダの極北の街、ホワイトホースには3日間、滞在した。
なぜ3日滞在したかと言うと、オーロラを見るためだ。
ちなみに、英語でオーロラはノーザンライツと呼ばれている。

4月の上旬はオーロラを見ることができるギリギリの時期らしい。
徐々に暖かくなってきて、雪解けも間近。
夏シーズンは30度を超えることもあるようで、暑い時は暑いのだ。

ここを逃せば機会は来年以降だ。
だからこそ、なんとしてでも、オーロラを見逃したくなかった。
3日滞在すれば、オーロラを見れる確率は90%らしい。

1日目、オーロラの出始める23時以降から、1時間に1度、外を確認することにした。
なぜ23時かというと、22時までは外が明るいからだ。
太陽の光が残っているので、オーロラが出ても、なかなか見られないのである。

なんと、夜の20時まで、この明るさである。
22時になっても、日本で言う、ようやく暗くなって来たかな、という明るさなのだ。
日の沈みの遅さに、地球の極北を感じる。

1日目は、曇り時々晴れといった感じだった。
1時間ごとに5分ずつテラスから外を見て夜空を張っていた。
だが、オーロラはその姿を見せなかった。

月は綺麗だった。

ちなみにオーロラを見るには、いくつか条件がある。

1つめが、北の空が晴れていること。
雲がかかっておらず、星が見えている状態でしかオーロラは見られない。
雲よりもはるか上空で起こる現象なので、当然と言えば当然だ。

2つめが、太陽の活動が活発であること。
中学校の時、太陽の活動について習った人も多いのではないだろうか。
フレアと呼ばれる爆発が太陽では起こっており、太陽風という風が地球に吹き続けている。
この太陽風と電子は通常、地球の磁場によって弾かれている。
だが、地球に入り込める「抜け道」があるのだそうだ。
その抜け道をすり抜け、太陽風や電子が地球に影響を及ぼした時に、オーロラという現象になる。

3つめが、運だ。
その日に応じてオーロラの活動状況は異なる。
オーロラを予報してくれるサイトもいくつかあるが、あてにならない。
どこで活動が強いかは知っていても、見れるのは運なのだ。

だが、3日いればさえ90%の確率で見れる、というので3日宿泊するのだ。
1日目は、なんの兆候もなく、過ぎ去って行った。
本当にオーロラなんて現象が存在するのか、怪しく思えるほどだ。

2日目、テラスで仕事をして過ごし ( 寒くないし気持ちよかった ) 、23時がやってくる。
この日は快晴で、いよいよオーロラも見えるのでは、と期待が高まらずにはいられない。

1日目と同じく、1時間に1回外に出て、空を観察してみた。
やはり夜は寒いので、長時間外にいることは辛い。
ガイドさんから支給された防寒具を着込んで、いつでも外に走れる準備はしていた。

だが、待てども待てども、オーロラは見えてこない。
この日は、朝まで待つことができず、力尽きて寝てしまっていた。

だが、翌朝、驚きの声を聞くことになった。

一緒のロッジに宿泊していたドイツ人のフィリップが、オーロラを見たというのだ。
北の空がぼんやりと白くなって、それから緑に変わったのだという。
トムクルーズに顔が似ているイケメンスタッフも「オーロラ見たか?!」なんて聞いてくる。
僕はあれだけ張っていたのに、一体どうして見逃したというのだろうか。

ちなみにロッジは朝食も夕飯も、他のお客さんと一緒に食べる。
スタッフもかなり気さくなので、仲良くなるのが早いのだ。
年齢も関係なく、世代も国籍も超えて楽しめる素晴らしいロッジなのだ。

さて、いよいよ3日目である。
90%の確率が、ついに追い詰められてしまった。

見られなかった人の話を聞いていた。
ここまで来て見られなかったらと思うとガクブルである。
日本からはシアトル、バンクーバー、そしてホワイトホースと3回、飛行機乗り継ぎだ。
さらに、空港から車で1時間。
そう簡単に来られる場所ではないのだ。

トムクルーズ似のスタッフに相談すると、プランが必要だとアドバイスをもらった。
そこで、1時間ずつ、防寒具を着込んで、外に待機することに決めた。
休憩は1時間ごと睡眠をとって、じっくり体力を蓄えながら待つ。

夜は23時をまわって、いよいよ決戦の時がきた。
ここで見られければ、もうなんで来たのかわからない。

しばらく、夜空は暗いままだった。
良いカメラが無いため、写真は暗い空だが、星空が広がっていて綺麗だった。

それにしても、とにかく寒い。
さすがに夜は、防寒具を着ていても寒い。

だが、待ち始めて1時間がすぎた、その時。

「あっ! あれ? あれそうじゃない??」

山の向こう側と空が、うっすらと不自然に白くなっていた。
最初は月明かりに照らされた雲かとも思ったが、そうではない。
確実に、何かしらの光のようでもあった。
しかも、どんどん大きくなっているではないか。

その瞬間、部屋から飛び出て凍った湖の上に走った。
ロッジの目の前には湖が広がっていて、この時期は完全に凍っている。
雪がつもっているので雪原にしか見えないが、湖なのだ。
事前情報によると、部屋のバルコニーから様子を見張り、見えたら湖に走れとのことだった。
慌てすぎて、靴を忘れるくらいには焦っていた。

慌てて靴を拾って、湖に出る。
そのまま、ロッジから距離をとって空を見上げた。

「おおおお!」

1秒ごとに、じんわりと北の空が緑色に揺れる。
それは、かつて全く見たことのない、体感したことのない体験だった。
これまで見た空には絶対に存在しない光が、そこにあった。

思わず、感嘆のため息が漏れる。
天使の残り香のような、きらびやかな揺らぎ。
活動が強い時なら、赤く、普通ならば緑になる。
緑だけでも、十分に、感動が背筋に走るほどに、美しかった。

だが、驚いたのは、その活動時間だ。
空が揺らいでいたのは、ほんの10分あるかないか。
光が浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返して、そのまま消えて行った。
どこまでも儚く、美しい光だった。
10分程度の活動時間ならば、確かに2日目までの作戦では見逃していただろう。
他のお客さんに「出たら教えて!」と伝えられていたが、そんな時間もなかった。

ずっと粘り強く寒い中待っていなければ見えない光が、オーロラなのだ。

翌朝、ガイドに聞いた話だと、強い時は一晩中出ていることもあるらしい。
また、夜空一面をおおうこともあるようだ。
時とタイミングによって、大きくその活動が異なる。
運と粘り、2つの条件が揃ってこそ、人は満足にオーロラを見ることができる。

こじつけるわけではないが、なんだってそうだ。

普段、僕たちが生業にしている起業もマーケティングも、粘りと運とタイミングは必須だ。
運やタイミングがよくても、粘らなければ見逃してしまうかもしれない。
こういった原則は、それこそ自然界のあり方から変わらない常識なのかもしれない。

翌日、僕らはロッジを後にして、空港へ向かった。
車を運転してくれているガイドさんが見送ってくれる中、搭乗口へと向かう。
たった3日にしては、ものすごく時間が経ったような感覚だ。
その感覚こそ、重厚な3日であり貴重な3日であったことを強く伝えていた。

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